権現堂山に登る(前編・下権現堂山)
登山口には渓流公園が整備されています。自然の景観を活かし
た美しい公園です。
雪解け水の流れの中に水芭蕉が咲いていました。今年の尾瀬
は増え続ける鹿の食害で水芭蕉が見られなくなりそうだと聞き
ました。でも元々強い花だからまた復活してくれそうな気がしま
す。
杉林の石段を上ると山上に社殿がありました。豪雪地帯だけに
雪囲いがしてありますね。
広神村指定有形文化財 九頭龍権現木造(平成3年4月1日指
定)「像は信州戸隠神社の奥社、九頭龍神社のご神体として造
立されたもので厨子に安政4丁巳年(1857)と記されている。」
(広神教育委員会)
信州戸隠神社は日本神話では天照大神が「天の岩屋」にお隠れ
になった時「天の岩戸」を開いた天手力雄命(あめのたぢからお
のみこと)を奉斎した神社です。戸隠神社は奥社、中社、宝光社、
九頭龍社、火之御子社の5社で構成されています。
縁起によれば創建は嘉祥2年(849)とされています。平安時代
後期以降は天台密教や真言密教とが習合した神仏混淆の戸隠
山勧修院顕光寺として全国的に知られることになり多くの参詣
者で賑わったそうです。
戸隠山に向かって奥社参道左手が真言宗、右手が天台宗の領域
で、両派間には争いが絶えず、ある時真言宗徒が天台宗の僧侶
を襲撃し戸隠山を追放される結果になりました。
山を追放された真言宗徒は信濃川水系に沿って越後の魚沼や
蒲原に進出の手を広げ、伝播を重ねながら広神村の江口にも
やって来たと云われています。(「燕戸隠神社の七不思議」
石黒克裕 著県央文化出版株式会社 平成8年3月 発行)
魚沼市江口の戸隠神社は天正11年(1583)石祠を祭られ、
社殿建立は元治元年(1864)と云います。(由来書)
「権現堂山」の山名は戸隠神社のご祭神「九頭龍大権現」に由来
するのですね。
(上)ミツバツツジ(下)オオイワカガミ
ツツジの花とイワカガミのピンクが雨のしずくを溜めて瑞々しい
です。
稜線はどんより雨雲が垂れ込めています。新緑が目に鮮やか
です。振り返ると江口の長松集落が見渡せました。
登り始めて40分。傾斜が緩みブナ帯に入ります。残雪がまだ結
構ありますね。芽吹き間もない新緑と残雪のコントラストがいい
ですね。
ねー。素敵でしょ。これはブナの2次林ですね。か細くて頼りなさ
そうな雰囲気が、また何となくいいじゃありませんかー?
標高780m附近の大岩の下からコンコンと湧き出ていました。
冷たくて甘露の水ですよー。「弥三郎清水」とあります。
登山口に「弥三郎婆と鬼の穴(すみか)」と書いた大きな案内板
が建っていましたっけ。ここは鬼婆(オニババ)伝説の舞台にな
った場所だったのですね。
「ー人肉を喰らった鬼ババは神通力を得て権現堂山の岩穴に住
み着き、吹雪に乗って天空を駆け巡り、幼子をさらってむさぼり喰
らった。麓の村々のむずかる子供は“ほら、弥三郎婆がくるぞ”と
脅かされ、吹雪に鳴る障子の音に怯えながら寝入った。ー」
「以来約80年悪行を重ねた弥三郎婆サは典海大僧正に会い、
諭されて改心、「妙多羅天女」の称号を授けられるや一転、前
非を悔い、心清らかな子育ての神となって人々に尽くしている。」
と書かれています。
これとよく似た話で「弥彦の婆杉伝説」を聞いたことがあります。
佐渡の金北山、蒲原の古津、加賀の白山、越中の立山、信州の
浅間山と諸国を自由に飛行して悪行のかぎりを尽くし「弥彦のオ
ニババ」と恐れられました。
それから80年の歳月を経た保元元年(1156)、当時弥彦で高僧
との評判の高かった典海大僧正に諭され、ありがたい説経に目覚
めた老婆は世の悪人を戒め善人を守り、とりわけ幼児を守り育て
る大誓願を立てて働き出しました。婆々杉は樹齢1千年を超えると
いい、昭和27年に県の天然記念物に指定されました。
⇒その時のレポはこちら
大岩を縫って急坂を登り上げた所が8合目です。大岩の上に
立つと眼下に新緑の山並みが広がりました。吹き抜ける風が
爽やかに感じられます。でも眺望は今一利きませんね。
今年は雪が多かったからこの時期でも残雪が豊富ですね。
800m以上はまだ雪の世界です。
(上)東方向に上権現堂山(997.7m)が見えました。残雪が
たっぷり着いていますね。
(中・下)下権現堂山(896.6m)の三角点に着きました。
登り始めて2時間。結構イイペースで上がって来ましたね。
天気は今一ですが、後半は回復予報ですから大丈夫でしょう。
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コメント
ブナの新緑と残雪、絵になりますね!プロカメラマンの腕前ですね。5月でもまだ残雪の春山ですね、水芭蕉も綺麗!
静岡の岳人さん おはようございます。ブナの芽吹きの頃ってホントにキレイですね。誰もがカメラマンになったり、詩人になれるのですね。題材が素晴らしいからですね。きっと。流れの中に咲く水バショウも絵になりますね。
投稿: 静岡の岳人 | 2013年5月16日 (木) 07時54分
残雪の権現堂山、素敵ですね~♪
詳しい解説付きで、ナルホド々と、特に
弥三郎婆サの鬼婆伝説は興味深く聞かせて頂きました。
それにしても、ブナの2次林の芽吹き間もない新緑と残雪は、
この時期ならではの素晴らしさですね。
FUKU様 おはようございます。コメントありがとうございます。弥三郎婆サの鬼婆伝説はココと弥彦だけかと思ったら、佐渡にも会津にも雪国圏にいっぱいあるのですね。驚きました。ブナって癒してくれる不思議な木ですね。
春でも夏でも雨の日も晴れの日も、ブナ帯を通過するとホッとさせてくれる、ありがたい木だと思います。
投稿: FUKU | 2013年5月16日 (木) 11時08分
山うんちく。いつも楽しみにしています。
今回もとても参考になりました。
それにしても、山は女人禁制とか、山姥とかそんなんばかりですね。
男子禁制のお山とか、山ジイ伝説とかあったら教えてください。
弥彦の鬼ババアって言葉になぜかドキッとしました
わら様 おはようございます。訪問ありがとうございます。昨今は爺も婆も大活躍で弥彦の鬼ババもタジタジでしょうね。(笑)猫又みたいな人種もいる世相ですからね。昔の民話の世界に戻りたいような。
いつもブログ楽しみに拝見しています。一度挨拶に訪問したいのですが、道迷いばかりしてなかなか辿りつけないようです。(笑)
投稿: わら | 2013年5月16日 (木) 23時22分
しゃくなげいろさま
先日の会山行お疲れ様でした。
小生の駄レポに勝手ながらリンク貼らせて貰いましたので、ご了解のほど、願いあげます。
輝ジィ~ジ様 おはようございます。リンクして頂きありがとうございます。ブログ拝見しました。上下峰往復お疲れ様でした。山頂の雪解けの速さに驚きました。
投稿: 輝ジィ~ジ | 2013年5月30日 (木) 08時36分