三国山を歩く(上越国境・会山行 前編)
関越道が開通してからは縁が薄くなった感じのR17です。今日
は三国隧道の脇から三国峠に登り、三国山を経由して浅貝へ
下ります。
平標山までは北上しないので、ゆっくり花を愛でながら歩けそう
です。2.5万地図の現在地点の標高は1076mです。たった今
1080mに変わりました。気圧が変動しているのですね。
「ー登山道は三国隧道の北側の旧三国街道の急登だから最初の
30分を勢いにまかせて決して無理しないことだ。三国峠(約1300
㍍に昔から有名な、上野の赤城、越後の弥彦、信濃の三神を祀る
三坂神社がある。ー」
(越後の山旅 下巻 藤島玄著)
小生の愛読書「越後の山旅」のガイドで話を進めましょう。
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(上)ヤマアジサイ(山紫陽花)がきれいです。
(下)ノリウツギ(糊空木)も今が盛りです。
出だしの気温は18℃。時折涼風が吹いて快適です。途中に水
場がありました。「三国権現御神水」とあります。山腹から湧き出
る清水で往古の旅人達がノドを潤した所でしょうか?
そう思って飲めばおいしい水ですね。三坂山の山腹を九十九折
に幅広の立派な道が三坂神社のある峠の頂まで続いています。
雑談を交わしながら登っても苦にならぬ程、楽な勾配の道です。
先人の道張りの技術は凄いと思います。史跡めぐりの山旅です。
「三坂山 村より南南東の方にあり、三国峠とて村際より漸々に登
ること一里八町四十間余、上野国を経て江戸に出る街道なり。頂
に上州の赤城、信州の諏訪、本州の弥彦三神を祭れる社あり。」
(新編会津風土記)文献資料 (越後の山旅 下巻 藤島玄著)
「無格社 三坂神社 浅貝より三国峠を登れば頂上に三坂神社
あり。俗に三坂権現といふ。祭神は越後、上野、信濃三国の各
一の宮を合祀したるなり。上古は浅貝より上野国吾妻郡長井に
越ゆるには、清津川に沿ひ水源マンサガ池畔を経て往来せしも
、坂路の険阻なるより大同年中に、新道を今の処に改削せりと
いふ。旧道の形跡は幽に遺りて、稀に樵夫の通行するのみ。」
(南魚沼郡誌)文献資料 (越後の山旅 下巻 藤島玄著)
石燈籠の脇に「三国峠を越えた人々」と刻まれた石碑がありまし
た。筆頭は坂上田村麿に始まって、越後国諸藩歴代藩主が江戸
時代に参勤交代で通行したのです。明治時代に入ると与謝野
鉄幹、晶子の名前もあります。多くの文人墨客も通ったのです。
色んな人生のドラマが展開されたのでしょうね。
社殿の奥に三国山が大きく立ちはだかって見えます。峠道から
ずーっと木の階段道が続いています。植生保護の為でしょうが、
それにしても徹底していますね。
「ー三国山(1,636㍍)を見上げ、そこで終わる一直線のやや急
坂に向かって発足する。谷川岳、平標山間が東西に向くように、
平標山、三国峠間は南から北へ登るのだ。偏西の季節風の影響
を受け西斜面は草原、笹原が多い。道の左右は穂躑躅(ほつつじ)
、米躑躅(こめつつじ)の類の群生だ。ー」(越後の山旅 下巻
藤島 玄著)
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ゼンテイカ(禅庭花)
峠からフラワーロードが始まりました。正に百花繚乱です。その代
表がゼンテイカ(禅庭花)。ニッコウキスゲの呼び名が一般的です
ね。朝咲くと夕方には萎んでしまう一日バナです。でも萎む後から
次々咲いて、咲き競っています。
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(上)クガイソウ(九階草、九蓋草)葉が輪生し、その葉が層を作る
ので「階」→「蓋」になったそうです。
(中)アカショウマ
(下)アカバナシモツケソウ(赤花下野草)シモツケソウの高山型
変種とあります。中部地方から関東地方に分布しています。
きれいな花です。
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(上)オオバギボウシ春は山菜ウルイとして、今頃は花を楽しめ
ます。
(下)ヒヨドリソウ 6月に登った佐渡の山にもいっぱい咲いていま
した。
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上州の山並みです。山が果てる先の関東平野まで延々と続く
街道が見えました。若い頃群馬で過ごした日々が懐かしいです。
時折渓から吹き上げる涼風が心地いいですよ。
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オヤマボクチ(雄山火口)
オヤマボクチは捨てる所がありません。若葉はヨモギの代わりに
笹ダンゴの原料に使います。根は山菜の「山ゴボウ」になります。
葉の裏側に生える茸毛(じょうもう)を取り出して蕎麦のつなぎに
使われます。秋に枯れると適度に油分があるので火起しの着火
材(ホグチ)に利用されたのでこの名が着いたそうです。
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ガマズミ?マルバウツギ?それとも…。この花の名は一体何んて
いうのでしょうか?図鑑を見ても判りません。あっちこっちに咲い
ていました。線香花火みたいできれいな花です。
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お花畑に着きました。柵の向こうはニッコウキスゲが咲き乱れて
います。先ずは一服しましょうか。差し入れが回って来ました。
「おっ。冷たーい!美味しいですー。」
お花畑を越えたずーっと先の更に視線の先には空母のような特
徴的な平頂の苗場山が見えました。
早速地図を取り出して山座同定をしました。誰かが指差す先に
見える山はー?
あの高山の連嶺が白砂山から佐分流山でしょうか?信越国境の
山々が競り上がってきました。今日は遠目が利いていい日になり
ました。
トンボがヤケに目に付く日です。心配していたブヨがいないなー
って気をよくしていた処なのです。トンボさんが片っ端から退治
してくれていたのかもしれませんね。トンボさん。ありがとう。
さあ。いよいよ三国山の一気登りが始まりますよ。今日は暑過ぎ
ず、風も適度に吹いてくれるからバテる心配はなさそうです。
高度差100㍍を直登してぐんぐん高度を稼ぎます。峠は遥か下
になりました。雪の重みで傾斜した木の階段を巧くバランスを
取りながら上りました。
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途中、階段脇に咲く米躑躅(コメツツジ)の群生が目を楽しませて
くれました。可憐で可愛い花です。
漸く急坂を登り上りました。捲道を左に分けて頂上に向かうと、
道を開けて待っていてくれた虫捕りオジサンに遭いました。
「何か狙っているのですかー?」
「コヒョウモンモドキだよ。これ一筋に40年サ。可愛い蝶だヨ。」
きっと貴重種なんですね。
山頂に到着しました。峠から標高差350㍍を登り切りました。
お疲れさーん。
幸福の鐘です。「♪あの鐘を鳴らすのは誰~?♪あの鐘を鳴らす
のはあなた~」って歌もありましたねー。
先着者が順番にガンガン叩いていますね。
「幸福の鐘だってー。私も幸福になりたいわー。」
「わたしもー。わたしも。ワタシモー。グヮ~ン~!」
と山上の鐘がしばしガンガンと鳴り響いていました。
三国山頂から上州の山並みが広がりました。朝のうちは周辺の
山々には雲がかかって見えません。これから次第に晴れて来る
ことでしょう。
後半は三国山から三角山まで快適な稜線歩きが待っていました。
そのことは後編で書くことにします。
(前編 おわり)
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コメント
おはようございます。
山に登れるということ自体、幸せなんだと思いますよ!!
kazu1954さんおはようございます。そーなんですよ。急遽決まった山行の日が運よく梅雨の晴れ間に嵌ったのですよ。こんなことってあるのですね。ラッキーでした。
投稿: kazu1954 | 2013年7月24日 (水) 09時49分
天気がよくてなによりでした。
オヤマボクチが色づく前はこんな姿なんですね、知らなかった!
葉も根もみんな使えるって事も、知りませんでした。勉強になりました。
山いろいろ様 おはようございます。訪問ありがとうございます。梅雨の晴れ間に当たって助かりました。オヤマボクチの出たての頃は鮮やかな黄緑色で目を引きますね。山菜の活用術は先人の知恵でしょうか。まだ他にも忘れられて埋もれている知恵がいっぱいあるような気がしてなりません。
投稿: 山いろいろ | 2013年7月24日 (水) 17時22分
ニッコウキスゲの群落綺麗ですね!私も先日、男体山に行ったとき霧降高原で大群落を見ましたよ!!
静岡の岳人さん おはようございます。男体山に行かれたのですね。西に東に活躍されていますね。この日は晴れて遠く、日光白根山の頭だけチョッピリ見えました。花の名はゼンテイカだけど霧降高原で有名になったので頭に「日光」を冠けて「ニッコウキスゲ」の名で広まったと聞いたことがあります。鮮やかな黄紅色は見ると元気が出ますね。(笑)
投稿: 静岡の岳人 | 2013年7月25日 (木) 07時52分
会山行お疲れ様でした。
いつもながらのAcademicなレポで、色々と
学ぶ事が出来ました。(感謝)
輝ジィ~ジ様 こんばんわ。訪問ありがとうございます。当日は梅雨の晴れ間に嵌ってくれて助かりました。史跡と花いっぱいの人気コースと題材豊富でいい山行ができたと皆さんに感謝している処です。それから、東京から来たという夫婦組とスライドした時です。「新潟のNR会の方達ですか?」と声を掛けられました。「はい。」と答えたら「HPいつも見てますよ。山行の時は参考にさせてもらっているのですよ。」と返事が返って来ました。他県の人も見ている。という驚きがとても新鮮でした。そんな訳でこちらこそ今後ともよろしくお願いします。
投稿: 輝ジィ~ジ | 2013年7月25日 (木) 09時18分
先日、三角山手前で皆様の足を止めたizumiです。
楽山会の皆様にお礼が言えてほんと~に良かったです。
とても詳しく正確なブログを読みながら勘違いしていたお花の名前等、訂正できました。
ありがとうございました。
この日はトンボと蝶が多かったですね。
「コヒョウモンモドキ」はあちこちに飛んでいたので写真に撮る事ができました。
私はシジミチョウぐらいの大きさで水色の蝶が気にいりました。
これからもよろしくお願いいたします。
izumi様 おはようございます。訪問ありがとうございます。ブログ上ではお名前は存じ上げていましたがお会いできて何よりでした。今頃の三国山は色んな花が咲競って蝶が舞う楽園なのですね。舞う蝶を撮ろうと構えるのですが、「もうてぇがねぇ」もんで(動作が鈍くて物にならずの新潟弁)写真が一枚もありません。(笑)
袖振り合うも多生の縁といいます。こちらこそ今後ともよろしくお願いします。
投稿: izumi | 2013年7月25日 (木) 23時07分